大切に感じていること part2

私が中近東の遊牧民の伝統的な平織り（つづれ織り）の織物である「キリム」に興味を持ったのは、自由が丘にあるキリム専門店のホームページ、写真に添えられたオーナーの魅力的なキャプションによるところが大きい。

「キリム」は、遊牧民のテントの中の敷物、間仕切り、壁飾りや衣類や穀物を入れる袋などとして使われてきた。「キリム」の幾何学文様にはそれぞれに意味がある。織り手である女性たちは、目に映る物のみならず、自然現象や感情までも思いを込めて織り込んだことが紹介されている。この「文様にはそれぞれ意味がある」 というところに、とても興味を持った。

たとえば、眼＝邪視除け、鳥＝幸せの予感、水の流れ＝生命を支える水が常に身近にありますようにとの願い、櫛＝幸せな結婚を願うなど。唐紙の文様にもそれぞれに意味があることは、仕事のうえで知っていた。雲は雨を呼ぶことから実りと豊穣を表す。シダは葉裏に胞子がたくさんあること、その繁殖力の強さから子孫繁栄や商売繁盛に繋がるなど。なかでも 「キリム」は、良い持参品を持たせて嫁がせてやりたいと思う願いを込めて母親や祖母が織ったものだ。気が遠くなるような手仕事から伝わる娘や孫娘への深い愛情、修復の痕からも代々大切に使い続けられてきたことが判ります。たとえ持ち手が変わっても、その思いは感じとれる。

つくられたものに意味がある。物語がある。あるいは、思いを込めてものをつくる。物語性のあるものをつくるということは、「ものづくり」 にたずさわる者にとっては、とても大切なことだ。つくった分だけの物語がある。

そんな 「住まい」 をこれからもつくっていきたいと思う。