屋根 |
「美しい日本」 美しいという主観的な言葉の背後に排除や純化の意思はないか。
どんなに「美しく」ても、多様なものが共存できないような不寛容な国になっては元も子もない。という至極、もっともな意見だが、排除や純化の例えとして、建築の屋根様式が取り上げられていたことが興味深かった。国粋主義が台頭した昭和初期に「てりむくり」という日本建築の屋根様式が排斥された ということ。
反り(そり)と起り(むくり)ならわかるが、恥ずかしいが、そもそも「てりむくり」という言葉を知らない。「てりむくり」は、このコラムでは、「日本伝来の草ぶき屋根と大陸伝来の瓦屋根とが平安時代に出会い、習合して生まれた形。唐破風(からはふ)とも呼ばれ、中央が大きくふくらみ(起り)、先端へ行くにつれ、曲線が反転し上向きに反り返る(照り)」 と解説されています。照りは、反りと同じ意味だと思うが、要するに、反りと起りが連続した凹凸の滑らかな反転曲面を持つ屋根。有名な建築では、西本願寺飛雲閣や日光東照宮。身近では、神輿やあまり良い例えではないが、霊柩車の屋根を想像してもらえればわかりやすいかと思います。
「国家の品格」が求められた時代に、「てりむくり」のような折衷的であいまいな意匠が排斥された。この「国家の品格」を「美しい日本」というスローガンに重ね合わせているわけです。 (つづく)